(今回は、前回書いたとある男の子の話(https://tokyocare.jp/?p=2483)について、解説をします。なお、この男の子の話は架空のエピソードであり、実在の人物等との関係はありません)
この男の子は「宿題をせずに動画ばかり見ている子」です。そして、その様子「だけ」に注目すれば、
「動画を見たいという強い衝動性をコントロールできていない。だから、計画的に宿題ができない」
と見なすことができるかもしれません。
しかしこの子は、小学生の頃までは、たいていは期限内に宿題を提出できていたのです。もし今宿題をやらない主な原因が衝動性の強さ(=発達障害の特徴)なのだとしたら、小学生の頃に「衝動性のせいで宿題ができなかった場面」がほとんど見受けられなかったのは、なぜでしょうか?
そして、
「中学受験のための塾でひどく叱られ続けた」
「受験が終わる頃には疲れ果てていた」
という、この子の「事情」をふまえると、
「叱られ続けたのが苦痛で、勉強に対する意欲がかなり低下している」
という可能性も考えるのが自然ではないでしょうか?
もしこの子の周りの人(親や先生や医者や心理士)が、上記のようなこの子の事情――つまり、塾通いで心が疲弊したこと――に関心を持たず、「発達障害かもしれないから衝動性をコントロールする練習をしようね」としか言わなかったら?
そのときこの子は、「どうせ自分のことを何もわかってくれないんだな」と失望するかもしれません。そしてその失望感から、ますます宿題をする気がなくなり、親や先生と激しく対立し……というふうに、問題をこじらせ続けるかもしれません。
もちろんこれは、「発達障害という概念自体がニセモノなのだ」という話ではありません。この子には実際に衝動性の強さもあるかもしれませんし、その特徴をふまえた工夫の仕方を考えるのも大切なことです。
でも、一人ひとりの個別の事情を無視して、「あなたは発達障害だ。そして発達障害なら○○をすべきだ」という一般論だけを当てはめるようなやり方は、あまり効果が無いように思います。
(この話はさらに次回に続きます)
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