「いきなり知能検査」の問題点

 昨今、WISCやWAISなどの知能検査の存在が多くの人に知られるようになったことで、「知能検査よりも優先してやるべきこと」が軽視される場合も多くなっているかもしれません。

 例えば、「小学生の子どもがクラス替えのあとからなぜかイライラしやすくなっている」といった場合、親御さんや先生がまずやるべきことは、「新しいクラスで何かあったのか?」とよく考えることではないかと思います。

 ところが、この「何があったのかをよく考えること」をあまりやらないで、

「うちの子の様子がおかしい」

「もしかしてこの子には、普通ではない特徴があるのかも」

「それなら知能検査で特徴を調べてもらおう」

 という発想で、子どもにいきなり知能検査を受けさせようとする親御さんや先生が、昨今では珍しくない印象です。

 これの何が問題かというと、親御さんや先生の、「子どもの不調の原因は『生まれつきの特徴』なのでは」という先入観の強さが問題なのです。もちろん、生まれつきの特徴が不調に影響する場合「も」ありますが、それでも「いきなり知能検査」は急ぎすぎです。そうやって親御さんや先生が、子どもの生まれつきの特徴「だけ」にやたらと注目していると、そのこと自体が子どもを激しく傷つける可能性もあります。

 というのも、自分の生まれつきの特徴ばかりに注目された子が、その過剰な注目によって、

「あなたは『普通』ではない、だから問題が起こっているのだ!」

 と、責められているように感じてしまう場合がよくあるからです。そのような屈辱感を味わわされた子どもが、屈辱感のせいでもっと調子を崩すこともよくあります。

 不調の原因にあたる出来事が何かあったかもしれないのに、親も教師もその「何か」には関心を示さず、「あなたが『普通』じゃないからこうなっているんだ」という見方をしてくる――そんな状況では子どもの不調は改善しません。

 前回(https://tokyocare.jp/?p=2461)も述べた通り、「知能検査を実施する意義が本当にあるのかどうか」を関係者同士でしっかり話し合うことは極めて重要で、その話し合いを飛ばした「いきなり知能検査」は逆効果になりやすいのです。

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