自分の発達特性を理解するために、知能検査が役立つ場合はもちろんあります。ただ、知能検査の結果に納得ができないときは、「納得できない」という気持ちを無理に押し殺さない方がいいと思います。
というのも、知能検査で調べているものは人間の様々な特徴の「一部」に過ぎないので、「検査結果に表れている『その人の特徴』」と「ふだんの生活の中で表れる『その人の特徴』」が、ずれる場合もあるからです。
例えば、ふだん仕事をしているときに「聞き漏らしが多くて困っている」と感じている人が、知能検査では聞き漏らしによる失敗がかなり少なかった、といったことは珍しくありません。このようなとき、実は以下のような「検査で調べられない特徴」がひそんでいる場合も多いです。
- 仕事で関わる相手のことが怖いため、緊張感によって、仕事中は本来の集中力を発揮できていない。
- 仕事の内容に興味がなさすぎて集中しにくい(検査には興味があるから集中できる)。
- 相手の話自体は、実はちゃんと聞こえているのだけれど、仕事に関する知識がまだ足りないから話の内容が理解できていない。
このような特徴がひそんでいる場合、「(検査では)聞き漏らしが少なかった」という検査結果に違和感を覚えるのは当然のことかと思います。その違和感が手がかりとなって「ひそんでいる特徴」が見えてくる場合もよくあります。このため、違和感は押し殺さずに、「どんな違和感があるか」を心理士や医師に伝えていいと思います。
なお当センターでは知能検査を実施するだけではなく、「検査を受ける方々のふだんの生活の様子」などもうかがうことで、検査で調べられない特徴の振り返りも行なって参ります。お困りの際はどうぞお電話くださいませ。
※ 本エッセイは継続的に更新されます。毎回、発達障害やそれに関連するお悩みをテーマとし、そのお悩みの理由や対処法を考える上で役立つ知識・考え方などをご紹介いたします。
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